ヒトパピローマウイルス(HPV)感染から子宮頸がんになるまでの流れ

子宮頸がんも他の多くのがんと同様、通常はゆっくりと進行します。原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染してから、数年をかけて子宮頸がんへと進むことが一般的です。

しかも子宮頸がんの場合、外来で簡単に「細胞診」という検査が行なえるため、定期的にがん検診を受けていれば、がん化する一歩手前の「異形成」という段階で発見ができます。

つまり実際に子宮頸がんになる前に、治療できるということです。

HPVに初期感染してから、子宮頸がんになるまでの流れを詳しくご紹介していきます。

HPVへの持続感染から異形成まで

子宮頸がんの始まりは、性交渉によるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染です。

HPV自体はごくありふれたウイルスですが、その中でも16型や18型などの「ハイリスク型」と呼ばれる発がん性の強いタイプに感染すると、子宮頸がんのリスクが高まります。

とはいえ、ほとんどの女性は免疫力によって、感染から2年以内にウイルスを自然排出します。

80%以上の女性が一生に一度はHPVに感染するといわれますが、実際に国内で子宮頸がんを発症しているのは、年間10,000人強といったところです。

つまり大部分の女性では免疫システムが働いて、HPVへの感染は一時的なもので済んでいます。

しかし何らかの原因でHPVがうまく排出されず、そのまま子宮頸部にとどまってしまうことがあります。こうしてHPVに持続感染した細胞は、少しずつ「異形成」という前がん状態へと変化します。

異形成とは、細胞が正常な形ではなくなった状態です。レベルに応じて「軽度異形成」「中度異形成」「高度異形成」などに分かれます。

細胞がもとの形と比べていびつになればなるほど、がん化に近づいているということです。

子宮頸がん検診で行なわれている細胞診では、子宮頸部から採取した細胞を直接観察できますので、この異形成の段階で確認ができます。

ただし軽度〜中程度の異形成であれば、そのまま正常な細胞に戻る可能性もあるため、しばらくは経過観察をすることが一般的です。

正常な細胞に戻らず、高度異形成へと進んだ場合は、子宮頸がんに移行する確率が高くなりますので、病変を切除する手術(子宮頸部円錐切除術)を行ないます。

高度異形成〜浸潤がんまで

治療の対象となる「高度異形成」ですが、実はこの段階でもすべてが子宮頸がんに移行するわけではありません。

むしろ、がん化するのは20%程度といわれますので、子宮頸がんはかなり珍しい病気だといえます。ただし安全のために、現在は高度異形成が確認された時点で治療することが普通です。

しかしこの時点でも異常を発見できなかった場合、高度異形成の細胞の20%程度は、次に「上皮内がん」という段階へと進みます。

上皮内がんとは、がん細胞が「上皮」という粘膜の表面にとどまっている状態で、がんの中でもっとも早期のステージ(0期)です。この段階で発見できれば、ほぼ100%近く完治が期待できます。

しかし上皮内がんでも見つけられなかった場合、がん細胞は粘膜の奥深くに入り込んでいき、「浸潤がん」となります。最初に細胞が変化してから、ここまで至るまでには10〜15年はかかることが一般的です。

浸潤がんがさらに進行すると、子宮頸部をはみ出して周りの組織に広がり、最終的には膀胱や直腸などに浸潤していきます。

進行の速い「腺がん」を早期発見するためには

このように、子宮頸がんは長い年数をかけて少しずつ進んでいく病気ですので、定期的に検診さえ受けていれば、事態が深刻化する前にどこかの段階で発見することは十分に可能です。

発見が早ければ早いほど治療は簡単に済み、子宮も温存できますので、一度でも性交渉の経験がある女性はぜひ子宮がん検診を受けるようにしましょう。

ただし子宮頸がんの中でも、進行がんにならないと発見されにくいタイプが存在します。それは「腺がん」です。

子宮頸がんの7〜8割は「扁平上皮がん」といって、子宮頸部の中でも膣に近い側にできるのですが、残り2〜3割は子宮に近いほうにできる「腺がん」になります。

やや奥まったところにできるため検診の際に組織を採取しにくく、見逃されてしまうことも少なくありません。こうして発見が遅れるせいで、腺がんのほとんどは浸潤がんになってから見つかるといわれています。

腺がんを見逃さないようにするためには、細胞診と同時に「HPV検査」を受けることをおすすめします。

日本の子宮頸がん検診では、今のところ細胞診が中心に行なわれていますが、海外ではHPV検査を併用することで、早期発見率を高めようとする動きが既に始まっています。

HPV検査は、細胞診と同時にできる検査で、採取した細胞がHPVに感染しているかどうかを調べるものです。細胞診で異常が見られなかったとしても、HPV検査で陽性が出れば、子宮頸がんのリスクを疑うことができます。

これら2つの検査を受けることで、腺がんも含めた子宮頸がんの発見率はほぼ100%近くなるといわれています。日本でも、今後「細胞診+HPV検査」の併用がスタンダードになっていく可能性は高いでしょう。

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